剣道の授業崩壊
今日実家の掃除をしていたら、高校時代の剣道着が出てきた。
うちの高校は珍しいのかわからないが、剣道の授業があった。
中高一貫校だったので、計6年間剣道の授業をするのだが、5年間は基礎の素振りなどしかせず、高3になり初めて試合をする日程だった。
剣道の先生は顔がまじで怖かった。
顔に真剣の傷跡があった。まじで。
しかし、性格は温厚で、生徒から慕われていた。
そんな先生のことを僕たちは師匠と呼んでいた。
最初の試合は僕の友達のO君といつも授業中寝ているH君の試合だった。
O君は体がとてもでかく、ちっちゃいゴリラみたいだった。性格も粗暴だったが、なんだか憎めない奴だ。
対するH君は小柄で、性格も大人しい奴だったが、死ぬほど授業中に寝るので嫌われていた。
今までの5年間の積み重ねの成果をようやく発揮できる舞台に皆が心を震わし、観戦した。
いざ試合が開始すると、間髪入れないうちにO君はフルスイングでH君に面を打った。
そのスイングは今まで練習してきた振りではなく、スイカ割のスイングだった。
その場にいた全員が技を超越した圧倒的なパワーに魅了された。
面を打った瞬間の竹刀は三日月のような弧を描きながらしなり、ささくれが大量に宙を舞った。
普通なら一本のはずだが、審判のM君は授業のためにメガネを外していたので、見えていなかった。
おそらく彼の目には二本のかりんとうが動いている姿しか見えておらず、試合は続行された。
技という概念を無視し、己の力のみを信じた渾身の一撃にH君は戦意喪失し、走って逃げた。
その時点で勝負はついたが、O君は逃げるH君の背後を捉え、追撃を加えた。
4、5発シバいたところで師匠が待ったをかけた。
僕はO君は怒られると思った。
5年間の積み重ねを無視したスイング、逃げる相手を執拗に追いかけ回す根性の悪さ。
どれも怒られる要因としては十分だと感じた。
しかし、この期待は大きく裏切られた。
なんとH君が怒られたのだ。
師匠曰く、敵に背を向けるのは男としてダサいらしい。
O君は褒められも怒られもしなかった。
その瞬間僕たちはO君の行為が正当化されたと感じた。
次の試合から荒れに荒れたが気が向いたらまた続きを書きたい。
一つこの出来事から学んだことは、体格差は絶対だということだ。